実在する地域が舞台のアニメや漫画は、推し活がしやすい!?〜様々な視点で人気な理由を考察してみました。~

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アニメや漫画、ゲームなど数多くの作品の中でも、実在する地域を舞台とした作品は流行りやすい傾向にあります。読者の中には、実在する地域を舞台にした作品を視聴したことがある方もいるかもしれません。

アニメや漫画、ゲームのファンの中では、聖地巡礼の流行や、推し活文化などの外に出向く消費行動が近年流行っていることも事実です。そこで本記事では、このような外に出向く消費行動がより活発な実在する地域を舞台とした作品に注目していくつかの作品を例に、なぜ流行っているのかを独自に考察していきたいと思います。

この記事では

▶︎オタク・・・アニメや漫画、ゲームなど2次元の作品を好む人
▶︎推し活・・・作品そのものを楽しむ他、作中に関連するイベントに参加する、そのグッズを購入するといった2次元の作品に関する消費行動全て

とします。

人口の多い舞台と多くのメディア媒体、ラップといった斬新なテーマを掛け合わせた『ヒプノシスマイク』

『ヒプノシスマイク』はKINGRECORDS原作のキャラクターラッププロジェクトです。人口の多い舞台と多くのメディア媒体、ラップといった斬新なテーマで、特に20代半ば~後半のオタク女性を中心に人気を集めています。

『イケブクロディビジョン』、『ヨコハマディビジョン』といった、それぞれの地域を拠点とするディビジョン(チーム)がラップバトルを繰り広げます。このディビジョンは池袋、新宿、渋谷、横浜、名古屋、大阪の6つの地域があります。『ヒプノシスマイク』は音声ドラマを原作として、コミック、ゲームアプリ、アニメ、舞台など、多種多様なメディア媒体でオタク女性を中心に多くの人気を集めています。

この作品が人気な理由は大きく分けて3つほどあると考察します。1つめは、漫画やアニメだけでなく音声作品、ラップを中心としたライブやブルーレイ、サブスクリプションなどの音楽コンテンツ、YouTubeやニコニコ動画などのメディア配信等のメディア媒体の種類の多さだと考えます。いろいろな切り口で作品に入ることができます。

2つ目は、2次元作品が好きなオタク女子だけでなく、ラップが好きな層も楽しめることだと考えます。ラップというのは自身の出身地の特色を楽曲に盛り込む特色があります。(例として、『Dragon Ash』の楽曲の「俺は東京生まれHIP HOP育ち」という歌詞は有名ですね。)その特色とキャラクターと掛け合わせることにより、よりリアルなキャラクター描写ができ、ラップ好きにも響くような世界観が仕上がっていると考えられます。2次元作品が好きな層とラップが好きな層はあまり被らないものの、『ヒプノシスマイク』はラップの特色を上手く取り入れたため、より広い層を巻き込んでいます。3つ目は、池袋、新宿、渋谷、横浜、名古屋、大阪といった人口の多い地域を舞台にしており、その地域の人が親しみやすい点です。日本人は、自分の地域に関係することには関心を持ちやすいです。東洋経済によると、実際に地元志向の若者は近年増加傾向に有ります。

実際のコラボの例としては、2019年に大阪を拠点としてるキャラクター(オオサカディビジョン)が通天閣とコラボしています。若い女性が通天閣に多く推し活に訪れたそうです。

※参考:https://x.com/9Bside/status/1183950437780611072

まとめると、『ヒプノシスマイク』は、幅広いメディア媒体でラップ作品を展開するというプロデュースの上手い点、人口の多い地域を舞台にし、親しみやすい点、そしてコラボイベントによるオタク女性を中心とした推し活により流行ったのだと考えます。

ライブや声優の活動を通して地域復興に貢献する『ラブライブ!シリーズ』

『ラブライブ!シリーズ』は架空の学園アイドルを題材としたメディアミックス作品です。メディア媒体は、『ヒプノシスマイク』と同じく音楽作品を中心に多種多様です。ファン層は男女ともに存在しますが、やや男性多め、20代後半~が多いように感じます。

この作品は、『ラブライブ!』、『ラブライブ!サンシャイン!!』、『虹ヶ先学園スクールアイドル同好会』、『ラブライブ!スーパースター!!』などの各シリーズに分かれています。特にこの作品の中で有名な『ラブライブ!』と『ラブライブ!サンシャイン!!』を取り上げたいと思います。

『ラブライブ!』では、主人公たちは『μ’s』というグループに所属し、物語を繰り広げます。現実世界ではそれぞれのキャラクターの声を担当する声優が『μ’s』として活動しており、紅白歌合戦に出場するほど人気です。そんな『μ’s』が活動している舞台は東京の千代田区です。作中では神田明神でトレーニングをしているシーンが有名です。ラブライブのファン(通称ラブライバー)達はこの神社を聖地と呼び、ラブライバーを中心とした多くの観光客が訪れています。また、地域の活性化にもつながっており、これによりこの地域の商業施設が盛り上がることも相乗効果として人気を加速させています。

この神社コラボイベントとして、『ラブライブ!夏祭りin神田明神納涼祭り』が2024年8月に開催されます。『μ’s』のメンバーのトークイベントもあり、多くのラブライバーが来場することが予想されます。入場方法が事前抽選申込制なことも多く来場することを示唆しています。たくさんの来場者が訪れ、会場は大盛況でした。「夏らしいことができた」、「グッズを買えて満足」など来場者はそれぞれ楽しんだことをX(旧Twitter)で多くつぶやいていました。

※参考:https://x.com/ohtaki_bashi/status/1821866537436995912

神田明神(画像はphotpACより)

『ラブライブ!サンシャイン!!』は、静岡県沼津市を舞台に『Aqours』というグループがアイドル活動をしています。そんな『サンシャイン!!』ですが、沼津市の観光PRの作成や、『Aqours』への市長からお祝いメッセージの公表といった行政も公認の地域貢献をしています。

『ラブライブ!シリーズ』は『ヒプノシスマイク』と同じく、音楽を中心とした多くのメディア媒体や各関連会社のプロデュースやコラボにより、地域を盛り上げ、多くの人気を得ています。

作品と現実世界のリンクがしやすく、幅広い年齢層に親しまれる『クレヨンしんちゃん』


『クレヨンしんちゃん』は臼井儀人(らくだ社)原作の、漫画、アニメ作品です。埼玉県春日部市を舞台に主人公たちの日常生活を描いており、小学生から40代と幅広い年齢層の男女に親しみを持ちやすい内容となっています。

『クレヨンしんちゃん』の大きな特徴は、内容が日常生活で現実に存在する施設や人物が多く登場しており、あらゆる人に親しみやすく、高度なお笑いセンスでアニメに詳しくない人からも人気な点だと考察します。『クレヨンしんちゃん』は、イトーヨーカドーを基にしたサトーココノカドーや、実在する芸能人が度々出演しています。また、この現実的な世界観に即した多くのジョークが予備知識のない人でも面白くみれるのだと考えます。更に、春日部市、埼玉県ということも作中でよく強調されています。たとえば、『埼玉紅さそり隊』という不良グループや『春日部防衛隊』という主人公と友達のグループなども登場しており、埼玉・春日部への地元愛が視聴者にも伝わってきます。

現実世界では、やはり『ラブライブ!シリーズ』と同じく、地域復興に貢献しており愛されていることが伺えます。例えば、春日部駅の電車の発車、到着メロディーは『クレヨンしんちゃん』のオープニングテーマであったり、春日部市ホームぺージでは『クレヨンしんちゃん観光ガイド』のコーナーが設けられています。

『クレヨンしんちゃん』は、より親しみやすいストーリーと地元愛でその地域の人を中心とした人気が出ています。

横浜市を舞台とし、リリース直後からリアルイベントで注目を浴びた『18TRIP』


『18TRIP』(スマートフォンゲーム会社『リベル・エンタテインメント』と音楽制作の『ポニーキャニオン』原作)は近未来の横浜である「HAMA18区」における「旅」をテーマとしたスマートフォンゲームです。この作品は、観光業を生業とした観光区長と呼ばれる男性キャラクターが多く登場し、このキャラクターが推し活をする20代前半~のオタク女性を中心に人気を集めています。

この作品は、主人公は氏名を変更でき、男女両方選択可能で、男女問わず楽しむことができます。アプリ内で実在する観光地を紹介する機能や、ARで実在する場所でキャラクターと共に撮影することのできる機能があります。その地域に関心を持ち、その地域に出向くといった推し活がしやすいようになっています。このキャラクターと共に写真が撮れる機能は同じく女性のオタクに大人気の携帯アプリ『刀剣乱舞』でも評判が良く、推し活に利用されていました。

ホームページでは簡単な性格診断から閲覧者に合うキャラクターを選定しキャラクターに興味をもってもらえるようなサービスがあります。筆者も実際に診断をしてみて、出てきたキャラクターが気になりました。キャストは、『ヒプノシスマイク』や『マッシュル』などの10代、20代の女性に人気な作品に出演した今流行りの声優を多く採用しています。

このように、キャラクターや地域に興味を持ってもらい、出向く推し活をしやすいような開発サイドの工夫も見られます。

コラボの例としては、毎年開催される横浜市のイベントの「横浜開港祭」に2024年の6月にオリジナルフォトスポットが展示されました。X(旧Twitter)では、多くの人が、写真を添えて来場し、推し活をしたことを呟いていました。更に、横浜市の数箇所で「18TRIPデジタルスタンプラリー」が開催され、リアルのイベントに力を入れている事が伺えます。また、アニメイトでは、『18TRIP』のパネルの展示が新しく行われており、こちらでも今売り出している事が分かります。

『18TRIP』は、アプリ内の機能や、コラボでより推し活がしやすいようにプロデュースされており、外に出向いて推し活をする女性を中心に勢いが増しています。

 

画像はいらすとやより

まとめ

実在する地域が舞台となっている作品には以下の共通点が見つかりました。

▶ラップや学園アイドル、日常をより現実に即して描くといった斬新なテーマで消費者をひきつけている
▶行政を巻き込んで地域復興をすることでより多くの人に親しみを持ってもらい人気が出ている
▶実在する地域なので、その現実のその地域のコラボイベントが開催されやすい
▶実際に外に出向いて推し活をするオタクに人気
▶様々なメディア媒体を使い地域を巻き込むといった作品のプロデュースが上手い
▶ラップや作中に地名を出すといった地元愛は視聴者受けが良い

このように「作品のテーマ」、「地域復興」、「地元」、「推し活」など様々な視点で実在する地域が流行りやすい理由を考察しましたが、その中でも「推し活」は特に大きな要因の一つではないかと考えます。前述の通り推し活は今や行政にも注目されるほど大きな市場価値がある消費行動です。実在する地域に関心をもってもらうことによりオタクたちを推し活へより促進できる『ヒプノシスマイク』、『18TRIP』のようなIPは特に今後も伸ばし続けていくでしょう。

これからも実在する作品の動向に迫っていきます!

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