中国の「推し活」事情は?中国のオタク女子が訪れるお店などを視察!アフターコロナの深センから読み解く

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筆者は、2023年11月に香港国際空港が実施した「ワールド・オブ・ウィナーズ」という、香港行きの往復無料航空券がもらえるキャンペーンにて、香港とお隣の中国・深センへ行く機会がありました。

中国というと、コロナ禍以降、日本人は中国へのビザなしの渡航ができない状況となっています(2023年12月現在)。そのため、アフターコロナ以降の中国のオタク事情は、インターネットを通じて日本へ知られることが大半となっています。

筆者は、香港に到着後、羅湖口岸にて、中国の深セン特区ビザを取得し、数日間、深センへ滞在しました。

今回ですが、深センで実感した、中国のオタク事情などをお伝えしたいと思います。

※深セン特区ビザの取得の方法などは本稿と関係がございませんので割愛します。

深センとは?

深センとは、中国の広東省にある地域です。深圳経済特区として指定されています。

香港とは隣り合った地域となっていますが、完全に政治体制的には別の地域となっているため、行き来には、パスポートと入境手続きなどが必要です。

深センには、スマートフォンや携帯電話の5G基地局など、様々な通信機器を手がける「ファーウェイ」や、日本でもマーベラスを傘下に収めたことで有名な企業である「WeChat」(中国版LINE)のテンセントなどが拠点を置いています。

そのため、深センは “中国のシリコンバレー” と証されることもあり、習近平国家主席が深センを訪れた際にも「中国共産党の強固な指導な結果だ」と述べるほど、中国において、深センの経済発展の規模は、中国にとって経済発展の成功事例として国内外に誇示したい事例と言えます。

参考

深センで見かけたオタク事情を解説する前に…

深センで見かけたオタク事情を解説する前に、アフターコロナの中国にて、現地の中国人がどう生活しているのか解説しましょう。

「WeChat Pay」と「Alipay」でほぼ完全キャッシュレス化を実現

深センはもちろん、中国ではスマートフォンでのQRコード決済「WeChat Pay」と「Alipay」でほぼ完全キャッシュレス化を実現しています。

イメージするなら、日本で言う「PayPay」がほぼ中国全土で使われているのと考えていただくのが早いです。

深センの地下鉄を乗る際にも、商店で飲み物を買うとき、マクドナルドでハンバーガーを食べるとき、さらには、マッサージを受ける際にも、「WeChat Pay」と「Alipay」の支払いが可能です。

中国では、この「WeChat Pay」と「Alipay」の2つが普及したことによって、現金の取り扱いがほとんどなくなり、筆者が中国で現金を見たのも、タクシーの運転手が有料道路の料金所で料金を立て替えた際くらいです。

ただし、外国人が持つVisaやMasterCardを使える店舗が深センにはほとんどなく、外国人ですら、「WeChat Pay」の利用をしなければ、中国で過ごすことは不可能と言っても過言ではありません。

インターネット規制が厳しく、Google系サービス・YouTube・X・Facebookへのアクセスが不可

中国に詳しい方は既にご存じかと思いますが、中国では、Google系サービス(Gmailなど)・YouTube・X・Facebookなどへのアクセスが不可能です。これは、金盾(グレートファイアーウォール)と呼ばれる中国政府が運用するインターネット検閲システムがあるからです。

その代わりに、アメリカや日本で使われているWebサービスの代替版がほとんどの場合、中国に存在し、例えば、Googleなら、中国では「Baidu」、Xなら「Weibo」、WhatsApp・LINEなら「WeChat」のようなイメージです。

深センのホテルでこのインターネット規制を実際に体験してみましたが、YouTubeが利用できないことが大きく、YouTubeで配信されている日本の動画を中国から見るのは非常に厳しいと言えます。

なお、中国ではBLが規制されていると報じられていますが、筆者が確認した限りだと、日本の商業BLレビューサイト「ちるちる」へのアクセスが深センの現地回線からは可能でした。

※インターネット規制の対策方法として、VPNを利用する、香港で購入したSIMカードや日本の携帯電話会社の国際ローミングを利用するなどありますが、本稿とは関係ございませんので、詳細は割愛します。

スマートフォンがないとほとんど生活が困難と言っても良いレベルに普及

中国では、前述の「WeChat Pay」などのキャッシュレス決済に含めて、様々な企業のサービスが「WeChat」上のミニアプリとして展開されています。

例えば、中国で有名なコーヒーチェーン店である「ラッキンコーヒー」では、WeChat上でのオーダーが必須です。さらには、中国版Uber Eatsである「美団」もスマートフォンがないと利用できません。

そのため、街中には日本で言う「ChargeSPOT」のようなモバイルバッテリーシェアサービスが展開されており、まさに、スマートフォンのバッテリーがなくなると、ライフラインが絶たれると言っても過言ではないでしょう。

中国のオタク事情とは…?

日本のアニメグッズの取り扱いのあるバラエティショップも

深センでは、日本のアニメグッズの取り扱いのあるバラエティショップも、羅湖区のショッピングモールにありました。

筆者が確認した中では、『ブルーロック』『ハイキュー!!』『Free!』『原神』が確認できました。いずれも正規ライセンスを得た物を販売していたようですが、全体的に、日本では男性よりも女性に人気の作品の商品の取り扱いがバラエティショップには多かった様子です。

ただし、中国企業であるHappy Elementsが配信している『あんさんぶるスターズ!!』のグッズはバラエティショップでの取り扱いはありませんでした。

街中でも痛バッグを使うオタクも…

イメージ

羅湖区のショッピングモールを歩いていると、痛バッグを使うオタク女子も数人程度いました。

遠くからオタクを見ただけであったので、どのような作品を痛バッグに使用しているのかわかりませんでしたが、日本のアニメ作品もしくは中国で人気の作品の缶バッジなどを使ったようなものでした。

日本人のオタク女子では、痛バッグを使うシーンは、イベント時・池袋などでの買い物といったタイミングでしか使わない傾向にあるため、日本で言うイオンモールで痛バッグを見かけることはありませんが、中国では、日常生活で痛バッグを使う生活習慣もある人もいるはずです。

深センを歩いていると、「愛国」などと言った中国共産党のスローガンが掲げられた看板を多く見かけます。経済は開放されていても、政治的・日常的には、何かと縛られている傾向にはあるようで、同じアジアの自由な資本主義国家である日本に憧れる節もあるかもしれません。

日本のアニメショップ「らしんばん」のコピー店も深センには存在

深センには、日本のアニメショップ「らしんばん」のコピー店も展開されていました。

場所は深圳宝安国際空港から近い、深センの国際展示場があるエリア。日本で言う、”成田” 的な場所です。

店内も、日曜日の17時の訪問でしたが、店内には数人の痛バッグを持ったオタク女子がいました。

品揃えも、日本の池袋での「らしんばん」「K-BOOKS」での取り扱いと異なり、にじさんじの商品の取り扱いが一切なく、『夢王国と眠れる100人の王子様』や『A3!』、『アイドリッシュセブン』、『スタンドマイヒーローズ』といった日本の女性向けスマホゲームの缶バッジの取り扱いが多数ありました。

ただ、中国企業の展開している『あんさんぶるスターズ!!』の取り扱いは、池袋と比較してもあまりなく、中国では需要としては『あんさんぶるスターズ!!』はあまりないのかもしれません。

一方、『ブルーロック』や『呪術廻戦』の取り扱いもあったりしましたが、全体的にらしんばんのコピー店では、ほぼ女性向け商品の品揃えでした。

なお、ホワイトボードで自由にイラストが描けるスペースも設けられており、深センのオタク女子の憩いの場になっている模様です。

にじさんじの取り扱いがないのは、そもそも、中国では、にじさんじの動画配信が展開されているYouTubeを見ることができないためと見られます。

深センのオタク女子は複数ジャンルを兼務することが多い?

短時間ではありますが、らしんばんのコピー店で来店者の動きを見ていました。とある20代くらいの女性は、『アイドリッシュセブン』のコーナーを見た後、違うジャンルの棚を覗いていたようです。

また別の女性も、似たような行動を取っていたので、サンプルとしてかなり少ないことは承知ですが、深センのオタク女子は複数のジャンルを兼務している方も多いのかもしれません。

日本では、複数のジャンルを同時に推しているオタク女子もいますが、一つのジャンルをずっと浮気せず推している方もいます。

そのため、中国のオタク女子と日本のオタク女子の間では、”ジャンル” という概念がそもそも違う可能性も高いです。

中国のスマートフォンを香港で購入し、アプリストアを眺めてみました

筆者は、香港にて、中国本土版のファーウェイの「Mate 30 Pro」を購入し、中国の「HUAWEI ID」を取得して、アプリストアである「HUAWEI AppGallery」を覗いてみました。

日本国内での使用にあたっては、総務省の技適未取得機器を用いた実験等の特例制度を利用しています。

※技適未取得機器を用いた実験等の特例制度(総務省):https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/exp-sp/

『アイドリッシュセブン』は中国本土ではゲームの配信はされていないのにもかかわらず…

Baiduで「アイドリッシュセブン 中国本土」と検索した結果

中国でのシェア率も高く、深センにもApple Storeのようなお店があったファーウェイのスマートフォンのアプリストア「HUAWEI AppGallery」では、『アイドリッシュセブン』の登録がありませんでした。

Baiduでも、中国本土で『アイドリッシュセブン』をプレイする方法も調べてみましたが、非公式でダウンロードできるサイトが出てくるのみ。

この時点で疑問に思ったのは、深センのらしんばんのコピー店で見かけた『アイドリッシュセブン』のコーナーを覗いていたオタク女子は、果たしてどうやって『アイドリッシュセブン』を推しているのかという点。

おそらく、筆者の推測では、「bilibili」(中国の動画配信サービス)で配信されている『アイドリッシュセブン』のアニメを積極的に楽しんでいると思われます。

そのため、日本人の考えている『アイドリッシュセブン』の推し方と中国の『アイドリッシュセブン』ファンの楽しみ方は大きく違うのかもしれません。

「HUAWEI AppGallery」でもオタク女子向けスマホゲームが多数配信

「HUAWEI AppGallery」で『あんさんぶるスターズ!!』と中国語で検索したところ、関連ゲームとして、おそらくペルソナとして想定されるオタク女子向けのスマホゲームも配信されていることがわかります。

また中国本土向けに「HUAWEI AppGallery」では『夢王国と眠れる100人の王子様』・『Fate/Grand Order』も配信されています。

中国ではスマホゲームのプレイにあたって実名認証が必要です

中国ではスマホゲームのプレイにあたって、実名認証が必要となります。

この実名認証は、中国の身分証明書が必要なため、日本のパスポート番号では突破は不可です。

しかしながら、未成年者を含む中国の国民がスマホゲームをプレイするにあたって、実名認証が要求されることは、中国政府に自身の趣味や嗜好などを把握されているとのことです。ある意味、中国の監視社会の一面が現れていると言っても過言ではありません。

また記事作成中、中国ではオンラインゲームの課金制限などの新規規制案も公表されています。

参考

中国で「推し活」は今後流行りそうな雰囲気です

中国では、日本の女子高生の制服を日常生活でも着ている人もいるようで、深センでもそれらしき人を複数人見かけました。

今回の深センでは、「痛バッグ」といった日本のオタク女子のトレンドが中国にも来ていることがはっきりとわかり、台湾有事といった形で日本と中国の関係がなくならない限り、日本の「推し活」文化が今後中国で広まる可能性がかなりあります。

ただし、日本で見かける3次元系の推し活とは異なり、中国では2次元系の推し活のイメージが強め。

街中では、『名探偵コナン』とのコラボ企画を展開している店舗や、アメリカ発祥のチェーン店の「ピザハット」での『原神』コラボなどを見かけましたが、逆に、日本で人気の韓国アイドルといった広告などはほとんど見かけませんでした。

そのため、日本での「旧ジャニーズ」や「K-POP」といった推し活の文化よりも、『あんさんぶるスターズ!!』や『にじさんじ』といった2次元系の推し活トレンドが今後中国でもさらに受け入れられるのではないかと思います。

しかしながら、日本で有名な『にじさんじ』は中国ではYouTubeの規制のため、日本で見られる生配信をリアルタイムで中国で見ることができないので、中国ならではの日本人にも受け入れられるような独自のVTuber文化も広がる可能性もあります。

ただし、中国でも「にじさんじ」「NIJISANJI EN」は「Bilibili」で配信されていますが、言語の壁もあるのと、YouTube規制の壁もあるため、日本の「にじさんじ」人気がそのまま中国で反映されるとは限らないとは思われます。

今後の課題

①Xが使えない中国でオタク女子は日本のトレンドをどう把握してるのか?

中国では前述の通り、Xが使用できません。そのため、日本のオタク女子の多くが使うXにアクセスすることは中国からできないため、中国のオタク女子が日本のトレンドをどう把握してるのか疑問に残る部分もあります。

日頃、アニメイト池袋本店などを覗いてみると、中国語が飛び交う場面も頻繁に見受けられ、日本にいる中国人留学生などが、日本のオタク女子のトレンドを日本からWeiboなどで発信し、中国で広まっている可能性も考えられます。

しかし、深センでのオタクの様子を見かける限りだと、Xを使えない中国で、日本のオタク女子の文化である「痛バッグ」を見かけたのは驚愕するばかりです。

②日本でも人気のVTuber文化が今後中国でもどうなるのか?

日本でVTuberの配信プラットフォームとしても使われているYouTubeが利用できない中国では、今後、VTuber文化が中国でどうなるのか疑問があります。

日本では「にじさんじ」がオタク女子に人気の中、深センのらしんばんのコピー店では「にじさんじ」のグッズの取り扱いがない中国では、「Billbilli」でどこまでアプローチできるのかも気になるところです。

やはり、中国のインターネット規制などを現地で体感すると、中国以外では定番のYouTubeが利用できないというのは、新型コロナウイルスを経て閉鎖的な中国そのものを表しているような気がします。

まとめ:開放経済ながらも社会主義体制の中国でも、日本の2次元系の推し活が流行るかも

中国は開放経済を取り入れていますが、政治体制は社会主義です。しかし、同じアジアの隣国の日本のトレンドを、インターネット規制などを超えるために工夫しながら現地のオタク女子は追っているようです。

筆者は、日本のオタク女子のトレンドである「痛バッグ」を深センで見かけたのは大変驚愕しました。

しかし、それ以上に日本のオタク女子の文化が中国でも受け入れられる土壌があることも現地で体感しました。

今後、日本の『あんさんぶるスターズ!!』といった作品を “推し活” しているオタク女子の文化が中国でも多く広がるのではないかと思います。

Space-Jでは、日々、オタク女子のトレンド・最新情報などを収集しています。さらに詳細を知りたい企業様につきましては、ご連絡ください。また、「オタク女子推しラボ」の他の記事も参考にしていただけますと幸いです。

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