推し活が現代の若者文化となった昨今。推し活は、アニメや漫画、ゲームなどの二次元コンテンツから、アイドルやアーティストといった三次元まで、あらゆる分野に広がっています。そして、その熱量を支え、さらに加速させるのがSNSの存在です。
実は、アニメや漫画、ゲームなど二次元の存在を応援する二次元系の推し活と、アイドルやアーティスト、ボーイズグループ、俳優など実在する人物を応援する三次元系の推し活では、活発に利用されるSNSとその使い方が大きく異なります。なぜなら、それぞれのSNSの特性やコンテンツの形式が、推し活層(推し活をしている人)の行動に影響を与えているからです。
本記事では、二次元系と三次元系の推し活層が、それぞれどんなSNSをどのように活用しているのか、その違いや理由、そしてそれぞれの推し活を支えるSNSの役割について詳しく解説していきます。
なお、このオウンドメディアを展開する合同会社Space-Jは、アニメや漫画、ゲームなどの二次元コンテンツを中心に、推し活関連ビジネスの戦略コンサルティングを展開する企業です。合同会社Space-Jは、メディア運営で培ったノウハウを活かし、コンサルティングサービスやPR代行サービスを提供しています。また、情報収集にも注力し、リアルな推し活の情報を提供しています。様々な人が推し活を通じてポジティブに生きられる文化の創設を手助けをしています。
二次元系の推し活層は目的別に使い分け、交流や発信をする
はじめに、ニ次元系の推し活層が主に利用しているSNSを紹介します。
情報交換・交流をするX(旧Twitter)
X(旧Twitter)は、二次元系の推し活において欠かせない存在であり、リアルタイムでの情報交換の場として、ファン同士の活発なコミュニケーションを促進しています。アニメや漫画、ゲームなどの公式アカウントが存在し、イベント情報やグッズ販売情報などもリアルタイムに共有されるため、二次元系の推し活層にとっては大事な情報収集源です。
活用方法としては、仲間同士で情報共有をするほか、推しに関する自身の熱い思いを投稿することで、ファン同士が共感し合い、新たな繋がりを築いています。また、公式アカウントのみをフォローして完全に情報収集専用として使う人や、グッズの交換募集のために使う人もいます。さらに、推しのイラストや手作りグッズなどのファンアート・二次創作をアップしたりする様子も見られます。
二次創作が多いpixiv(ピクシブ)
pixivは、アニメや漫画、ゲームなどを好む人たちの中でも、推しのイラストや漫画・小説(ファンアート・二次創作)を好む層に特化したプラットフォームです。様々な作品のイラストや小説といった二次創作を投稿・閲覧できることが特徴です。
X(旧Twitter)でもファンアートや二次創作が投稿されていますが、pixivはファンによって生み出された多種多様なコンテンツが数多く集まり、そういった作品専用の場となっています。さらに、コミックマーケットなど同人誌即売会に参加する人は、自身の作品のPRのためにpixivを活用する傾向にあります。
しかし、最近は同人活動の文化の勢いが落ちているため、pixivもかつてのような活発さは見られません。
コスプレイヤーが利用するInstagram
Instagramは、主にコスプレ写真を投稿するために利用されています。写真をアップすることに特化したSNSのため、多くのコスプレイヤーがコスプレの写真を投稿しています。「#cosplay」で検索すると海外のコスプレイヤーの写真も確認できるため、ハッシュタグを活用すれば自分のコスプレをより多くの人に見てもらえるきっかけにもなります。
また、ゲームのキャラクターなどを推しているZ世代の推し活層が大量のグッズを並べた写真や、ライブやイベントにおしゃれして参加している写真も散見されます。しかし、二次元系の推し活においてInstagramを頻繁に利用しているユーザーは少なめな状況にあります。
オンラインゲームに欠かせないDiscord(ディスコード)
Discordは、特定の趣味を持つ人々が集まるクローズドなコミュニティで、より深い交流を促進するプラットフォームです。特にeスポーツ系・オンラインゲームなどのゲームを好む層に好まれています。特定のジャンルに分類してサーバーを作成でき、チャットや音声通話を通じて情報交換や議論をしたり、ゲームをしながら音声通話を楽しむことができます。
サーバーを自由に作成できるため、ゲームの作品や知人同士のグループで分けて活用することが多いです。チャット欄でゲームをする予定を立て、当日は音声通話をしながら楽しむというのが主な流れとなっています。女性だけでなく、男性にも人気のプラットフォームです。
二次元系の推し活層はSNSで交流・創作物の発信・感情整理をする
二次元系の推し活層が好むSNSの特徴として、ハッシュタグを活用した検索や投稿が挙げられます。共通の趣味を持つ人々を簡単に見つけることができ、同じ作品やキャラクターを推すファン同士でつながりやすくなっています。作品名やキャラクター名、関連用語などをハッシュタグとして付けて投稿することで、興味関心のある他のユーザーの目に留まりやすく、そこから新たな交流が生まれることもあります。
一方で、限られた仲間だけで楽しめることや、閉鎖的・限定的であることが好まれやすい場合もあります。ローカルルールが厳しかったり、ひっそり楽しみたいという気持ちを抱いていたりする人が多いのも、二次元の推し活層によく見られる傾向です。
また、短文で手軽に感想や情報を発信できる環境も好まれています。自分の好きな作品やキャラクターに対する熱い思いや、ちょっとした感想などを気軽に投稿し、他のファンと共有することで、共感を得たり、新たな発見をしたりすることができます。また、短文でも文字化することにより、推しに対する感情整理にも繋がります。
このように、自分の気持ちや考えを共有・整理することが、二次元系の推し活における大きな楽しみの一つとなっていると言えるでしょう。
三次元系の推し活層は視覚情報重視、リアルな交流がSNSにも反映される
続いて、三次元系の推し活層が主に利用しているSNSを紹介します。
推しの情報・様々な面を知り、コメントで繋がるInstagram
Instagramは、三次元系の推し活において非常に人気のあるプラットフォームです。グループなどの公式アカウントのほか、多くの芸能人やアーティスト、インフルエンサーが個人で公式アカウントを開設しており、写真や様々な情報を投稿しています。ファンは推しのグループや個人アカウントをフォローすることで、彼らの最新情報や活動の様子をいち早くチェックすることができます。
ストーリーズでオフショットなどが投稿されたり、ライブ配信でコメントを送れば交流ができるため、ファンにとっては必見のコンテンツが多数あります。より推しのことを知り、推しをたくさん見るためにInstagramを活用しているケースが多く見受けられます。また、ファン自身のアカウントでは、推しの写真や動画、ライブへ行った際の写真、応援メッセージなどを投稿し、他のファンと共有することも盛んに行われています。
パフォーマンスや日常の動画を楽しむTikTok
TikTokは三次元系の推しがいる人にとって、Instagramと同様に人気のSNSです。特にアイドルやグローバルボーイズグループなどのアーティストはダンスパフォーマンスを行うため、短い動画で魅力を伝えるTikTokは発信の場として最適とも考えられます。また、最近はショートドラマも登場し、動画のジャンルも多様化されています。
ファンは、TikTokを通じて推しのパフォーマンス動画や日常の動画をチェックし、推しの活動をチェックしています。また、推しに関連するトレンドや、流行している曲を用いたダンス動画を推しが投稿することもあるので、こまめにチェックして動画を楽しんでいます。推しが投稿した「踊ってみた」動画を真似て自分も動画を投稿してみたり、コメントやいいねを送ったりして一緒に盛り上がれるのも大きな特徴です。現在では音楽番組を中心に、メディアで推しのTikTokの投稿が取り上げられることも多くあります。特にZ世代のファンに人気のプラットフォームです。
YouTube
YouTubeは、三次元系の推し活において、ミュージックビデオやライブ配信、インタビュー動画などを視聴するための主要なプラットフォームとして活用されています。ファンはグループや事務所、レーベル、推しが出演している番組など、推しの周囲を取り巻く様々なチャンネルを登録し、動画を楽しみます。
YouTubeではミュージックビデオの再生回数を延ばす(増やす)ことが推し活の一環となっているケースもあり、新作のミュージックビデオが公開されると何度も再生して視聴するファンがいます。何度も見てお気に入りの振付やシーンを探したりと、動画1本でも楽しみ方は無限大です。また、推しの音楽活動やパフォーマンス、パーソナルな側面など、より深い情報を得るために活用しています。
X(旧Twitter)
X(旧Twitter)は、グループや事務所・レーベルなどの公式情報の発表や更新がリアルタイムで素早く行われるため、二次元系の推し活同様、三次元系の推し活においても重要な情報源となっています。また、リポストなどで参加できるキャンペーンや、ライブ・イベントなどの重要な情報が拡散されることも多いです。
ファンはXで推しのライブやテレビの出演情報など、様々な情報をチェックし、仲間内で共有します。また、同じグループや同じ推しのファン同士で交流したり、情報交換したりする場としても利用されています。しかし、Instagramでも情報を収集できることや、Xではグループのアカウントはあるものの、個人のアカウントが少ない傾向にあるといった理由から、三次元系の推し活層では、Xの利用頻度が低い傾向にあると推測されます。
三次元系の推し活層はSNSで「見て楽しむ」推し活をし、推しとも交流
三次元系の推し活では、視覚的なコンテンツが重要視されます。推しの魅力を最大限に感じることができる写真や動画は、ファンにとって非常に価値の高い情報源であり、共有や保存の対象となります。また、SNSでのコミュニケーションにおいても、テキストよりも写真や動画が優先される傾向にあります。
さらに、三次元系の推し活では、推し本人との関係性を重視する傾向が強いです。そのためSNSでは自分の写真をアイコンにし、覚えてもらおうと考えているファンも多く見受けられます。推しの公式アカウントをフォローし、そこから発信される情報やコンテンツをいち早く入手することや、コメントやいいねなどのリアクションをすることは欠かせません。
それに加えてライブやコンサート、様々なイベントに行き、パフォーマンスを楽しみ、推しに覚えてもらう(認知してもらう)、そしてまたコメントをする…というひとつのサイクルのようなものが、SNSを中心にして存在しているように推測されます。
推し本人との繋がりを感じることが三次元系の推し活のメインですが、ファン同士の交流も盛り上がっています。SNSを通じて一緒にライブやイベントに行く仲間を探したり、逆にライブやイベントで知り合った人とSNSで繋がったり、推し活の写真を見せ合ったりしています。リアルな推しとの交流・ファン同士の交流があることにより、SNSでの推し活が盛り上がっている傾向にあります。
二次元系の推し活層と三次元系の推し活層が使うSNSが違う要因
推しとの距離感
二次元と三次元の推し活では、ファンと推しの間の距離感が大きく異なります。この違いは、推し活の形態や、ファンが重視する活動内容に影響を与えています。
二次元系の推し活では、アニメや漫画・ゲームなどの作品のキャラクターが推しの対象となります。これらのキャラクターは現実世界に存在しないため、ファンが直接的に接触したり、コミュニケーションを取ったりすることはできません。そのため、二次元系の推し活層はファン同士のコミュニケーション、推しに対する思いを投稿する、イラストなどの創作活動がSNSの主な活用方法になります。感想や情報、推しの魅力を伝える創作物を共有したり、共感し合ったりすることが主な活動となります。
一方、三次元系の推し活では、実在する芸能人やアイドル、アーティスト、インフルエンサーなどが推しの対象となります。ファンはSNSを通じて推しの情報を入手するだけでなく、コメントを送ったり、実際にライブやイベントに参加してその感想を伝えたりと、推しとの距離を縮めようとします。また、推し本人が発信するコンテンツへのアクセスやリアクションは、ファンとしての存在をアピールし、推しとの繋がりを感じることができる重要な手段となります。
コンテンツの形式
二次元系のコンテンツは、主にイラストや漫画、アニメ、静止画にセリフを入れたボイスドラマなど、ストーリー性を感じられるものが展開されています。
これらのコンテンツはファンの想像力を搔き立て、キャラクターを自分なりに解釈したり、要所要所にキャラクターのアイデンティティーを感じ取って楽しみます。また、コラボイベントなどで特別に描かれるイラスト・新規作品は特に貴重なものとなり、さらにファンがキャラクターを考察する要因となります。
一方、三次元系のコンテンツは、TV出演やライブパフォーマンス・舞台・イベントの様子といったような動画や写真など、推し自身が一目でわかるものがメインで展開されています。また、ライブ配信などリアルタイムのコンテンツや、コメントを読むなどのファンサービスが求められています。また、SNSでのライブ配信や、短尺動画プラットフォームでの日常的な投稿など、より親近感を感じられるコンテンツも人気があります。
SNSの特性
SNSの特性は、二次元系と三次元系の推し活層が利用するプラットフォームの選択に大きく影響しています。それぞれのSNSは、独自のアルゴリズムやユーザー層を持っており、それが各プラットフォームにおける活動のしやすさ、ひいては、そのプラットフォームが重視される活動内容に繋がっています。
二次元系の推し活では、同じ趣味を持つファン同士を探して交流したり、推しへの思いを自分のペースで綴ったり、自分の創作物をアップすることが重視されます。そのため、共通の趣味を持つユーザーが多く集まるプラットフォームや、創作物の公開や共有がしやすいプラットフォームが好まれます。例えば、X(旧Twitter)はハッシュタグを通じて共通の趣味を持つファンと繋がりやすい・短文で推しへの思いを投稿できるという特徴があり、pixivはイラストや小説などの二次創作作品を投稿・閲覧するのに特化しています。
一方、三次元系の推し活では、推し自身の発信するコンテンツを視聴して楽しむことがメインの推し活となります。そのため、推し本人の公式アカウントが存在し、そこから発信される情報やコンテンツを容易に閲覧できるプラットフォームが選ばれる傾向にあります。InstagramやYouTube、TikTokなどは、多くの芸能人やアーティスト、インフルエンサーが公式アカウントを開設しており、ファンはそれらをフォローすることで、最新情報を得たり、推しのことをより深く知ることができます。
SNSの利用方法について知れば、調査に生かすことも可能
二次元系の推し活層と三次元系の推し活層では、活動の中心となるSNSや、その利用方法に明確な違いが見られます。これは、推しとの距離感、コンテンツの形式、そして各SNSが持つ特性などが複雑に絡み合った結果と言えるでしょう。
二次元系のファンは、キャラクターや作品そのものを推すため、物理的な距離は遠く、直接的な交流は叶いません。そのため、同じ作品やキャラクターを愛するファン同士で繋がり、気持ちや情報を共有したり、創作に打ち込んだり、思いを投稿することが推し活の中心になります。一方、三次元系のファンは、現実世界に存在する人物を推すため、ライブやイベントへの参加、SNSを通じたコミュニケーションなど、より直接的な形で推しとの距離を縮めようとします。
コンテンツの形式も、両者の違いを生み出す要因の一つです。二次元系では、イラストや漫画、アニメ、静止画にセリフを入れたボイスドラマなどが中心で、ファンがキャラクターを自分なりに解釈したりして楽しみます。三次元系では、写真や動画など、推し自身の姿やパフォーマンスを収めたコンテンツが中心となり、ファンはそれらを鑑賞することで、推しへの想いを深めます。
また、各SNSの特性も、推し活層のプラットフォーム選択に影響を与えます。X(旧Twitter)はリアルタイムの情報共有や短文での感想発信に向いており、pixivは二次創作の公開、Instagramはビジュアルコンテンツの共有・推しとの交流、TikTokは手軽にパフォーマンスなどの視聴ができます。ファンは、それぞれの目的に合ったSNSを選び、推し活をより充実したものにしています。
このように、二次元系と三次元系の推し活層は、異なる環境と方法で推し活を楽しんでいます。どちらにも共通して言えるのは、「推し」への強い愛情と、その愛情を共有し、深めるためのコミュニティを形成している点です。そして、それを可能にする様々なプラットフォームが、現代の推し活を支えていると言えます。
さらにこうしたSNSは、アンケートなどを実施する際など、推し活をする人の行動や心理に関する調査・分析を行う際にも活用することができます。
しかし、今回の記事で述べたように、二次元の推し活層と三次元の推し活層は使っているSNSが異なる場合があります。SNSで調査する場合、調査手法によっては、回答者の属性が偏ってしまい、実態にそぐわない回答結果となる可能性が出てきてしまいます。
特に複数のSNSでフォロワー数に差がある場合は注意が必要です。回答者の偏りを防ぐためには、複数のSNSで均等にアンケートを実施する、あるいは、調査対象を特定のSNSユーザーに限定するなどの工夫が必要です。
合同会社Space-Jでは、トレンドなどの調査を行う際に、それぞれのプラットフォームの特性を活かし、さらに専用のツールやChatGPTやCopilot、GeminiといったAIなども併用することで、より多角的で偏りの少ない推し活の情報収集に努めていきます。
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